研究概要 |
1.Src型チロシンキナーゼXykの本態解明 ゼノパス卵で発見されたSrc様の遺伝子産物Xykの本態を解明するため、そのアミノ酸一次配列の解析と分子クローニングを試みた。その結果、Xykはこれまで鳥類などでSrcと呼ばれてきた遺伝子産物と同等のものであり、遺伝子としてはSrc2であることがアミノ酸配列の解析, 及び質量分析から明らかになった。 2.受精後の卵内タンパク質のチロシンリン酸化亢進の確認 Xykは受精に伴って1分以内に活性化される。そこで、タンパク質チロシンリン酸化を抗リン酸化チロシン抗体を用いた免疫ブロット法で解析した結果、受精後数分以内に多くの卵タンパク質のチロシンリン酸化が亢進することが確認された。 3.受精の成立、卵の活性化におけるSrc型チロシンキナーゼの役割の解明 種々のチロシンキナーゼ阻害剤とSrc特異的阻害剤を用いて、精子依存的な卵の活性化を調べた。その結果、Xykを阻害する薬剤、ペプチドはすべて卵の活性化を阻害した。 4.Xykの下流因子としてのホスホリパーゼCγの同定 受精に伴ってホスホリパーゼCγとXykが会合し、その複合体の中でホスホリパーゼCγがチロシンリン酸化を受けていることが見い出された。またこの時、ホスホリパーゼCγの活性は受精前より亢進していた。ホスホリパーゼCγとXykとの会合、ならびにホスホリパーゼCγの活性化はSrc特異的阻害剤PP2によって阻害された。このことは受精時のカルシウムシグナリングの上流にXykがあることを示唆している。 5.過酸化水素刺激による卵の人為的活性化の発見 過酸化水素刺激によって卵活性化が起こることが様々な指標を通じて確認された。また、これらの指標で見られたことはSrc特異的阻害剤PP2によって阻害された。このことは、卵の活性化を促す人工的手法として、カルシウムイオノフォアや電気刺激と並んで過酸化水素刺激が有効利用できることを示している。
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