低分子熱ショック蛋白質ファミリーに属するαB-クリスタリン遺伝子とHSPB2遺伝子は959bpを挿んでhead to headで存在している。両遺伝子は心臓と筋肉で共に発現が高いが、一方水晶体とグリア細胞ではαB-クリスタリンの発現だけが見られる。本研究の目的は向き合う二つの遺伝子の組織特異的発現とその調節機構を明かにすることにある。今年度は昨年度得られた筋芽細胞C2C12を用いた転写調節領域の解析結果をもとにトランスジェニックマウスを作成し個体レベルでその働きを調べた。その結果HSPB2遺伝子の上流にある2つのE-boxが筋節でのHSPB2発現に重要であることを見い出した。これらがαB-クリスタリン遺伝子の発現に関わっているか現在検討中である。 さらに今年度はグリア細胞でαB-クリスタリン遺伝子のストレス応答に関与する転写調節機構の解析を行った。αB-クリスタリン遺伝子プロモーターの近傍には2つの熱ショック応答エレメント(HSE-PとHSE-D)が存在する。我々は熱ストレスでけでなく、細胞外カリウム濃度の上昇によるストレスにもHSE-Pが働いていることを見い出した。さらにHSE-Pへの結合蛋白質を調べた結果、熱ストレスでは転写因子HSF1が、カリウムストレスではHSF2が結合しているという興味深い結果を得た(投稿中)。
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