研究概要 |
本研究では,クラミドモナスで単離されたアクチン完全欠損変異株(ida5)を用い,アクチンの機能を解析することを目的としている. この変異株はクラミドモナスに唯一存在するアクチン遺伝子に変異があるために産物をまったく発現していない.そのため,アクチンを含む内腕ダイニン複合体の一部が軸糸から欠落し,運動性が低下しているという表現型をもつ.しかし細胞の増殖に関しては正常である.また,この変異株ではアクチンを欠損している代わりに,アクチンと低い相同性しかもたない新しいアクチン様タンパク質(NAP)が発現していることがすでにわかっている. 平成11年度は,この変異株に,変異を導入したアクチン遺伝子を戻す実験を中心に行った.作成した変異アクチン遺伝子は2種類(G63D,G268D)で,いずれもアクチンの立体構造モデル,ショウジョウバエの間接飛翔筋の変異解析などから,アクチンの重合性を失わせる変異だと考えられるものである.それぞれの変異アクチン遺伝子をida5に戻したところ,いずれの形質転換体も接合管形成能は回復しなかった.従って戻されたアクチンは重合性をもたないことが示唆された.しかし鞭毛の運動性はいずれも野生型と同程度にまで回復し,さらにida5で失われていた内腕ダイニンも軸糸に戻っていた.このことは,内腕ダイニンの軸糸への回復にはアクチンが重合する必要がないことを強く示唆している. 今後は導入した変異アクチンのin vitroでの性質を検討する予定である.
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