1.アフリカツメガエル卵から精製した二種類の核膜前駆小胞PV1、PV2が、いくつかの蛋白質を除いてまったく異なる蛋白質を含んでいたことから、卵成熟期に起こる卵核胞崩壊時には体細胞分裂時とは異なり核膜蛋白質が核膜上で均一化する前に小胞化が起こることか明らかとなった。 2.抗αSNAP抗体による核膜形成抑制の分析と形成された核の電子顕微鏡観察の結果、前駆小胞の融合にαSNAPが関与していることが強く示唆された。 3.核膜前駆小胞上にあってクロマチンの結合に寄与しているラミンB受容体(LBR)蛋白質の組み換え体断片を大腸菌で発現し、これを用いてLBRの精子クロマチン結合部位を調べた。その結果、従来考えられていたHP1結合部位とは異なり、アミノ末端から89番目アミノ酸までの部位が結合に関与することが明かとなった。 4.核膜・核マトリックス蛋白質の麦芽アグルチニン結合蛋白質の解析をさらに進め、新たにp47へリカーゼとCA150転写因子をクローニングしそれらの構造と機能の解析を行った。 昨年度の結果と合わせて、精製小胞を用いた核膜形成系を構築し、核膜形成にはPV1、PV2の二種類の小胞が必要であることを明らかにした。小胞のクロマチンヘのターゲティングに働いているLBRのクロマチン結合部位を明らかにした。また核膜前駆小胞の融合にはαSNAP、66k膜蛋白質、48k可溶性蛋白質が関与していることを示唆した。核膜構築原理の全容解明には今後、小胞の融合装置の更なる解析と、小胞一クロマチン結合の調節機構の解明が大切である。
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