研究概要 |
精製小胞による核膜形成に関する研究: アフリカツメガエル卵の粗抽出液から、クロマチンとのアフィニティーを利用して核膜前駆小胞画分、PV1とPV2,を精製する方法を確立した。PV1とPV2は、それぞれ大きい小胞と小さい小胞を含んでいた。このようにしてアフィニティー精製された小胞画分を用いた試験管内核再構成系を確立した。クロマチンをPV1、PV2、またはPV1+PV2と共に卵可溶性画分と反応し、形成された核を径行顕微鏡と電子顕微鏡で調べた。このようにして得られた結果と他の実験で得られた結果を総合して次のようなことが示唆された。(1)正常な大きさの核の形成にはPV1とPV2の両方の小胞が必要である。(2)PV1はクロマチン結合蛋白質と小胞融合蛋白質を含んでいる。(3)PV2はクロマチン結合蛋白質と核膜孔複合体形成蛋白質を含んでいる。(4)PV1は核膜を形成する活性があり、PV2は核膜孔複合体を形成し核が正常な大きさに成長するために必要である。 小胞融合装置に関する研究: 自己免疫性疾患患者血清を核膜形成機構の研究に応用した。この患者の血清は、いずれもアフリカツメガエル卵抽出液を用いた核形成系に加えると多かれ少なかれ核形成反応を阻害した。シェーグレン症候群の患者血清にはしばしば高い阻害活性が見出された。これらの血清と反応し、しかも核形成に寄与している蛋白質の分析法と精製法を確立し、K32とK199の血清について、その阻害形成の解析と原因抗原の精製を進めた。両者とも小胞の融合を阻害していることが示された。またそれぞれ、66kの膜蛋白質と48kの可溶性蛋白質が原因抗原であることをつきとめ、それらの精製法を確立した。今後両蛋白質とも部分アミノ酸配列の分析、cDNAのクローニングと研究を進めていく予定である。
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