1 サイクリンBの核外移行シグナル サイクリンBはMPE(M期促進因子)の構成因子の一つであり、細胞周期制御に非常に重要な役割を担っている。サイクリンBは細胞周期のG2期に細胞質局在を示すがM期(核膜崩壊直前)に核内に移行することが知られている。われわれは、核外移行の特異的阻害剤であるレプトマイシンB(LMB)処理によって、サイクリンBの細胞質局在が壊れ核内にも移行することを示した。さらに、大腸菌に発現させ精製した組換え型サイクリンB蛋白質を核に微量注入したところ核から細胞質への移行が観察された。これらのことからサイクリンBに核外移行活性が存在することを明らかにした。さらにNES配列に似た配列をサイクリンBに見い出した。サイクリンBのアミノ酸残基(141から152)に対する合成ペプチドを作成し、卵白アルブミンと化学的に架橋したをNES-OV作製した。NES-OVを哺乳類の核に微量注入したところ、核から細胞質に素早く移動することを示した。さらにこの配列に変異を導入したところサイクリンBの細胞質局在が壊れることを示した。したがって、サイクリンBの細胞質局在が自身のNES配列によって規定されることを明らかにすることが出来た。 2 CRM1のドメイン解析 CRM1は核膜孔を通過することが知られている。この核膜孔通過はCRM1と核膜孔構成蛋白質との相互作用の繰り返しによって達成されると考えられているが、その詳細は不明である。われわれは、CRM1の種々の欠失変異体を作製し、核膜と相互作用できる領域を検討した。その結果、CRM1のN末端領域が、核膜に局在することまたCRM1と結合することが知られている核膜孔蛋白質と相互作用することを示し、CRM1のN末端が核膜孔との相互作用に重要であることを示唆した。
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