研究概要 |
本研究では,顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)受容体を介する細胞内シグナル伝達のメカニズムとその細胞増殖・分化への作用機序を解明することを目的としている。平成10年度は,G-CSF受容体のホスホチロシン残基に結合するタンパク質の解析を行ない,その一つとしてSHIP(SH2-containing inositolpolyphosphate 5'-phosphatase)を同定した。G-CSF刺激によってSHIPがチロシンリン酸化されることも明らかになった。また,好中球の増殖・分化に関与すると考えられるZnフィンガー転写因子であるMZF-2の機能解析を行い,転写を負に制御するドメインと骨髄系細胞特異的に機能する転写活性化ドメイン(50アミノ酸残基)を同定した。さらに,この転写活性化には骨髄系細胞に特異的なコファクターが関与していることを示唆する結果を得た。現在,MZF-2の生理的機能を解明するために,Diffential screeningによる標的遺伝子の探索とMZF-2遺伝子ノックアウトを進行中である。一方,細胞周期の制御に関与するCdkキナーゼの標的タンパク質を同定するために,CyclinE/Cdk2の基質スクリーニングを行ない,出芽酵母のAselpと相同性を有するヒトのタンパク質(PRC1)を同定した。PRC1は,M期の進行に伴って紡錘体中央領域(midzone)に,さらに細胞質分裂の時期には中央体(midbody)に局在化し,その後急速に分解されることが分かった。さらに,PRC1に対する特異抗体を細胞に微量注入することによって細胞質分裂が阻害されることから,PRC1が細胞質分裂の制御に重要な役割を果たすことが示された。
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