研究概要 |
本研究では,顆粒状コロニー刺激因子(G-CSF)受容体を介する細胞内シグナル伝達のメカニズムとその細胞増殖・分化への作用機序を解明することを目的とした。平成11年度には,好中球の増殖・分化に関与するZnフィンガー転写因子であるMZF-2の機能を明らかにするために,種々のMZF-2変異体を作成し,ルシフェラーゼ転写レポーター系による解析を行った。その結果,N末端領域(1-117a.a)には転写に抑制的に働く領域が存在し,それよりC末端側の50アミノ酸残基から成る領域(318-367a.a)には強い転写活性化能が存在することが分かった。この領域はホメオボックス型転写因子であるPax6の転写活性化領域と顕著な相同性を示し,両者の転写制御に共通のメカニズムが関与するすることが示唆された。また,転写活性化領域のみからなるMZF-2変異体が優性ネガティブに作用することから,この領域が他の転写因子と相互作用することが示唆された。しかし,既知のコアクチベーターであるCBPやp300との結合は認められないことから,MZF-2による転写活性化には骨髄細胞に特異的なコアクチベーターが関与していると考えられる。一方,G-CSF刺激によって活性化されるMAPキナーゼの標的プロテインキナーゼのひとつであるMNK1の生理的機能を明らかにするために,MNK1の構成的活性型変異体や,優性ネガティブ変異体を作成した。これらの変異MNK1を発現させた細胞における翻訳開始因子4E(eIF-4E)のリン酸化レベルの解析により,MNK1がeIF-4Eのリン酸化を介してタンパク合成開始の制御に関与する可能性が示唆された。また,MNK1は翻訳開始因子4G(eIF-4G)と会合してeIF-4Eをリン酸化することも示した。
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