研究概要 |
1) FRS2の機能解析;FRS2がどのようなシグナルを伝えるかどうかを明らかにするためFRS2の燐酸化ミュータントを作成し,これをPC12細胞に導入FGFにて刺激後FRS2と複合体を作る蛋白群及び下流のMAPK活性に与える影響を調べた.Grb2と同様Shp2もFRS2に結合するが,FGF依存性にShp2は燐酸化されGrb2-Sosと結合する.このことよりFGF依存性にFRS2-Shp2-Grb2-Sos複合体を形成することが判明した.FRS2の5つの燐酸化部位のうちMAPK活性はShp2結合部位より主に伝達される.他の4箇所のGrb2結合部位からはMAPKへのシグナルは伝達されにくく,これらの部位からはMAPKと異なる経路のシグナル伝達の可能性を示唆した. 2) FGFシグナルの質的差異を解析するため,FGFファミリーによる質的な分化変化を示す細胞株を検索した.膵前駆細胞株であるAR42J細胞のFGF1及びFGF7に対する反応を解析したところFGF1では膵外分泌細胞様,FGF7では膵管細胞様と異なる分化能を示した.AR42J細胞上にはFGFレセプターが存在し特にFGF7はFGFR2のみ特異的に活性化する.この性質を利用しFGFレセプターシグナル下流の因子に及ぼす質的な差を解析中である. 3) FRS2ノックアウトマウスの作成;現在へテロマウスまで得られこれらを交配中である.ヘテロマウスに変異はなく,FRS2の遺伝子量が半分でも表現型に差異はない.
|