研究概要 |
FGFの生体内での機能解析は、FRS2を同定しても、その固有のシグナル伝達解析の良い細胞系がなく、また遺伝子ノックアウトを作成しても発生初期に方向性が決定してしまうため、そこから細胞株を作成し機能解析をする方法論がとれず解析が困難であった.最近FGFシグナル異常が後天的に膵臓β細胞に作用を及ぼし、糖尿病を起こすことが明らかになった.FGFとインスリンはそれぞれ独立した成長因子であり,また歴史的にコンピテンスの概念は、IGFとの関連に起源があることから、FGFの働きを解明する糸口になりうる現象である.これらの原因を分子レベルで解明するため、FGFシグナル伝達機構の解析手段とし〓in vivoの膵細胞分化系の構築を行ない膵幹細胞を分離する.その後膵幹細胞にどのようなFGFシグナル伝達系が機能するかを検討する.我々はこのため経胆嚢的膵肝導入法を完成した。遺伝的、免疫学的、生化学的に確立された純系マウスの腹部切開後、胆嚢を穿刺し、ここより細いカテーテルを挿入した.先端を胆嚢管に固定後、造影剤を注入した.造影剤は総肝管を逆流し肝臓へ、また総胆管から膵管を逆流し膵臓へ流入し、効率良く物質を移送することが確認された.次に未分化胎児幹細胞株を導入した.末端にまで流入した細胞は導管栓塞後,導管上皮内へ侵入し外側へ移動した.細胞は各臓器に播種後腫瘍性増殖した.このことより細胞移植が可能であることがわかった。次に膵臓由来線維芽細胞を導入したところ膵臓に分化した.移植細胞は導管周囲の細胞環境の影響を受け再分化したことがわかった。これらの細胞群は培養開始後2週間であり、まだアミラーゼ、インスリン陽性細胞を含むので、これらを除外後、膵幹細胞が存在するかどうかを解析する.この膵幹細胞同定後に遺伝子操作等を行い、FGFシグナルを解析する.
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