研究概要 |
cfcA及びcfcB変異株は,核分裂後親株よりも早い時期に小さい細胞のまま分裂するが,細胞周期の長さは変わらず,分裂後親株細胞と同じ大きさ迄成長した後,次のDNA複製を開始する.つまりcfc遺伝子は細胞分裂のタイミングに関与する.またcfcA変異株はグリシル-tRNA合成酵素(GlyS)のαサブユニットをコードするglySa遺伝子に,cfcB変異株はAp4A分解酵素(ApaH)をコードするapaH遺伝子に変異を持つこと,分裂時期はAp4Aの細胞内濃度で決まること,Ap4AのレベルはGlySとApaHにより制御されていることなどを明らかにした.in vitro実験から,ATP及びグリシンに対する変異型GlySのKm/Kcat値は野生型GlySの各々20倍及び100倍以上高いことが解った.また 変異型GlySは,in vitroで野生型GlySの2倍以上のAp4A合成活性があることが解った.このことから,cfcA変異株でAp4Aの細胞内レベルが上昇するのはglyS変異による間接的結果ではなく,GlyS蛋白自身がAp4Aの細胞内レベルの制御に直接関与していると結論される.一方Ap4Aによる分裂時期の決定がどのように行われるか明確にする為に,Ap4A結合活性を持つ蛋白群を分離精製しN末を決定した処,未知の蛋白が見つかった.塩基配列から蛋白の構造のホモロジーサーチを行った処,(1)Zn^<2+>結合ドメインを持ち,(2)Ap4Aなどの多リン酸ヌクレオチド結合蛋白として殆ど全ての生物で保存されている蛋白であり,(3)細胞増殖周期に係わっているらしいことが予測されているが,その機能については殆ど解析されていない新規の蛋白であることが解った.この遺伝子の条件破壊株は、細胞分裂が遅れ長目の桿菌となる.またこの遺伝子の高発現は分裂を促進し,Ap4A過剰生産変異株の表現型を強調することが解った.
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