本研究は、マウス胎仔生殖細胞の発生・分化や増殖・生存能の低下、減数分裂の開始、精原細胞への分化の制御に関わる新規分子の単離・同定を、いろいろな分化段階の生殖系列細胞を材料としたサブトラクションcDNAクローニングにより行い、それらの機能を明らかにすることを目的とする。本年度は、cDNAを得る材料として異なる分化段階の胎仔生殖細胞を精製するために、外来遺伝子を胎仔生殖細胞で特異的に発現させられることがすでに報告されているoct-3遺伝子の発現制御領域にGFP(Green FluorescentProtein)遺伝子をつないだものでトランスジェニックマウスを作成した。得られたトランスジェニックマウスでは8.5日胚以降、出生時まで生殖細胞で特異的なGFPの発現が確認された。またこのマウス胚の生殖隆起及び10.5日胚背部腸間膜の細胞を解離後、蛍光顕微鏡下で蛍光を発する生殖細胞を単離できることを確認した。一方、初期胚での始原生殖細胞の発生に関与する遺伝子を得るために、生殖細胞を含む体を構成する全ての細胞のもとになる未分化幹細胞集団である、エピブラストからのcDNA合成を試みた。数百細胞程度からなる単一のエピブラストからcDNAを合成し、PCRで増幅することによりサブトラクションcDNAスクリーニングに足る量のcDNAを得た。今後この方法により単離生殖細胞からのcDNA合成も行う予定である。
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