ブタ精巣上体分泌液に見出された16kDaコレステロ-ル結合タンパク質(16kDa-ChBP)は、精子細胞膜からコレステロールを抜き取る作用によって精巣上体での精子成熟に関与していることが示唆されている。本年度は、1)雌性生殖器官内での精子の受精能獲得(capacitation)に対する作用の解析と、2)16kDa-ChBPの遺伝子欠損マウス作成のためのターゲティングベクターの構築を試みた。 1)16kDa-ChBPは、雄では精巣上体でのみ特異的に発現している。一方、capacitationの際にも精子細胞膜からのコレステロールの流出が起こることが知られている。この反応に16kDa-ChBPが関与している可能性が考えられる。そこで16kDa-ChBPのmRNAの子宮、輸卵管、卵巣における発現を性周期を追って調べたところ、何れの組織でも発情期と発情後期に発現量が高く、発情休止期と発情前期で低くなるという周期性が認められた。この時期は精子が子宮及び卵管内に存在する時期であり、また、排卵に伴って卵胞液が卵とともに放出される時期と一致する。これらの結果は16kDa-ChBPがcapacitationにも関与していることを強く示唆する。実際に、in vitroでは、精子のcapacitationを促進することが判明した。 2)16kDa-ChBP遺伝子をクローニングし、その構造を解析したところ、3個のイントロンによって分断された4個のエキソンからなっていることが判明した。さらにこの遺伝子は第12番染色体のD領域に位置していることが明らかとなった。そこで、エキソン2とエキソン3の一部まで約5.1kbpを、pMC1Neo(STRATAGENE)に含まれるTK promoterとpolyAシグナルを含まないネオマイシン耐性遺伝子に置き換え、DT-AカセットBベクタ-に挿入した。現在ES細胞へのトランスフェクションを行なっている。
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