減数分裂の細胞周期では、2回の分裂期が引き続いて起こる。また、cdc2キナーゼが体細胞分裂の場合とは異なる動態を示す。このことは、特異的なcdc2キナーゼの制御によって減数分裂周期における分裂期から分裂期への移行がもたらされている可能性を示唆する。本年度は、特に第一分裂終了時にみられるサイクリンB分解の部分的抑制の生理的意義について、ツメガエル卵母細胞の無細胞系を用いて検討した。 減数分裂周期の分裂期/分裂期移行を再現する卵母細胞抽出液を、抽出緩衝液で約1.3倍に希釈すると、第一分裂終了時のcdc2キナーゼの不活化が著しく速めらた。この不活化の促進は、サイクリンBの分解速度の上昇によること、またその結果、本来は完全には消失しないサイクリンBが完全に消失することが判明した。引き続いて、本来起こらないはずのCdc2の抑制的リン酸化が誘起され、cdc2キナーゼの不活化状態が維持されて、S期への移行がもたらされた。そこで、卵母細胞抽出液に非分解型のサイクリンB(ΔNサイクリンB)を加えてから希釈したところ、これを加えない対照の希釈抽出液ではS期への移行が引き起こされたのに対し、ΔNサイクリンBを加えたものでは、希釈していない抽出液と同様、Cdc2の抑制的リン酸化が起こらず、cdc2キナーゼは、サイクリンBの合成、再蓄積に伴って速やかに再活性化され、分裂期/分裂期移行が起こった。以上の結果から、減数第一分裂終了時には、サイクリンBの分解が部分的に抑制され、cdc2キナーゼの不活化が不完全であることが、第一分裂終了後に再び分裂期に移行するための本質的な条件のひとつであることが明らかになった。
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