すべての脊椎動物においては、体の前後軸に沿って繰り返し構造がみられる。脊椎骨や肋骨、あるいは脊髄神経などがその例である。ある単位組織を繰り返し配置することで、動物の体をより大きく、またより機能的にしている様子がうかがえる。このような繰り返し構造を分節と呼び、脊椎動物の体幹部においてはすべて体節中胚葉の分節に端を発する。体節の分節メカニズムについてはほとんど未解明であるが、ごく最近体節の分節化に伴って特異的に発現する初期分子マーカーの使用が可能となった。本年度は体節中胚葉の分節のメカニズムについて以下の研究を行った。 未分節の体節中胚葉は、その前端から一つずつ体節がくびれきれることによって分節化をおこすが、このとき次に分節する部位ではいったいなにが起こっているのか?このことを解明するために、分節部位を含むやや広めの領域を取り出し、それを宿主胚の本来は分節をおこさない未分節領域内に移植した。その結果、移植片は本来の分節パターンに従ってくびれ切れた。次に未分節領域を取り出し、それを分節部位内に移植したところ、移植片は異所的に分節をおこした。これらのことから、本来は分節をおこさない体節中胚葉も、何らかのシグナルを受け取ると分節できる可能性が示された。そこで、取り出す分節部位の領域をさらに細かくして、それらを宿主胚の未分節領域内に移植したところ、宿主胚において異所的な分節がみられた。以上のことから、分節は非自律的に起こることが明らかになった。
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