本研究においては、初期発生における中胚葉の部域化及び形態形成に焦点を当て、その分子機構を明らかにすることでボデイプランの確立のしくみを理解することを目的とした。 具体的には主に、1)中胚葉の背腹部域の決定、2)側板中胚葉の形態形成、3)からだの前後軸に沿った体節中胚葉の分節と境界形成、の3点に注目した。 1.初期中胚葉においては、からだの背腹軸に沿って背側に体節、腹側に側板というふうに、明確な部域化が見られる。本研究においては、体節中胚葉の確立にはBMP4の抑制が必要であり、側板の形成には高濃度のBMP4が作用していることが明らかになった。これらの知見は、BMP4やそのアンタゴニストであるNogginを産生する株細胞をニワトリ初期胚に移植して直接シグナルを作用させるという独自の方法によって明らかになった。 2.側板中胚葉は、もとは一層だった細胞群が二層に分かれ、それぞれがからだの外側と内側の形成に重要な役割を担う。本研究においては、外側を作る壁側中胚葉は隣接する外胚葉から、そして内側を作る臓側中胚葉は隣接する内胚葉からの誘導シグナルを受けることによって形成されることを明らかにした。 3.からだの前後軸に沿った分節パターンはほぼすべて体節中胚葉の分節が規定する。一続きの未分節中胚葉から、いかなるしくみで体節が境界線をもって作られていくのかについて解析したことろ、境界部において細胞同士の相互作用が重要な働きをもっていることを見いだした。我々はこの誘導活性をセグメンターと名付けた。 初期中胚葉のパターニングはその後のからだの発生に極めて重要な意味を持つことから、本研究から得られた成果は、からだづくりの基礎の確立の理解に大きく貢献するものと思われる。
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