研究概要 |
四肢パターン形成における位置価決定のメカニズムを理解するために,主にニワトリ肢芽を用いて以下の点を調べた。 1. 欠損型BMPの効果:BMPリガンドのプロセシング部位に変異を導入し,それを肢芽で強制発現すると,欠損型BMP-2では指間の細胞死が抑制され,水掻き様の構造ができる。BMP-4,BMP-7ではこの効果は見られず,従って指間の細胞死にはBMP-2が中心的に働いていると考えられる。 2. Wntファミリーの役割:肢芽先端部で発現するWnt-5aを肢芽全体で強制発現すると,主に前腕の短縮,異形成が起こる。AERの除去で先端部前側での発現は消失するが,後側での発現は残存する。AERで発現するWnt-3aとWnt-10aの機能を比較するために,これらをレトロウイルスで強制発現した。その結果,Wnl-3aはAERの誘導に関与し,一方Wnt-10aはAER直下の間充織を未分化状態に維持する活性を持つことが判明した。 3. Frizzledファミリーの機能:Wntレセプターとして機能するFrizzled(Fz)ファミリーのうち,Fz-4とFz-10をニワトリ胚で同定し,これらが肢芽で領域特異的な発現を示すことを見出した。Fz-10は肢芽後部の背側で発現し,Sonic hedgehogで誘導されるWnt-7aのレセプターとして機能し,一方Fz-4はAERとその直下の間充織で発現し,Wnt-5aまたはWnt-10aのレセプターとして機能している可能性が示唆される。 4. EphA-ephrin Aの相互作用:細胞選別の検定によって,肢芽の遠近軸に沿った位置価の決定にはGPIアンカー型の分泌性膜タンパク質が関与していることを見出した。これらの1つ,ephrin A2,は肢芽の遠近軸に沿って領域特異的に発現し,さらに膜にアンカーされない型のephrin A4-Fc融合タンパク質を過剰に与えると,レセプターであるEphA4に対する阻害抗体で見られるのと同様に,細胞選別がほぼ完全に阻害されることが証明された。
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