研究概要 |
四肢発生,再生における位置価決定にかかわる因子の役割を調べ,以下の成果が得られた。 1.オオイタサンショウウオの再生芽からRT-PCRでFGF-8,FGF-10,SHH,p63のcDNAを同定した。これらは切断後3〜5日で形成される再生芽で発現している。 2.FGF-4とSHHは発現部位が隣接し,互いに正の相互作用で発現維持されている。SHHによるFGF-4の誘導は知られているが,逆にFGF-4などによるSHHの発現誘導についての報告はない。これをニワトリ肢芽で調べ,前肢と後肢で比較した。FGF-4ビーズを後肢芽の前端部に適用すると,ビーズ近傍で組織が肥大化し,36時間後にはSHHの発現が誘導された。SHHの誘導はビーズよりも遠位側で見られ,またビーズの基部側にバリアーを入れて細胞移動を阻害しても起こる。SHHの発現に続いて異所的なHoxD13の発現が認められ,指のパターンは部分的に後方化していた。一方,前肢芽ではFGF-4により細胞増殖は促進されたが,異所的なSHHやHoxD13の発現は見られなかった。このように,FGF-4に対する応答能が前肢芽,後肢芽で大きく異なることが見出された。 3.EphAとephrin-Aは反発作用による細胞の移動を制御している。肢芽では先端部でEphA4が発現し,間充織の接着性に関与している。一方,リガンドのephrin-A2は肢芽基部では強く発現するが先端部では弱く,EphA4と相補的に発現している。肢芽の位置特異性決定における役割を検討する目的で,ephrin-A2を過剰発現したときの効果を調べた。過剰軟骨塊の形成や中足骨の融合などが見られたが,これらの変化は先端部の自脚部に限られていた。肢芽でephrin-A2を過剰発現させると,過剰発現した細胞同士が集合し,ephrinは間充織の接着性に影響する。このことはさらに細胞接着性の検定試験で確認された。
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