研究概要 |
四肢パターン形成における位置価決定のメカニズムを解明するために,主にニワトリ肢芽を用いて以下の点を調べた。 肢芽先端部で発現するWnt-5aを肢芽全体で強制発現すると,主に軛脚の短縮,異形成が起こる。AER形成にはWnt-3a以外のメンバーが関与している可能性を示した。Wnt-10aは肢芽形成以前では外胚葉で一様に発現し,その後予定肢芽領域の外皮で強く発現する。Wnt-10aを外胚葉で過剰発現してもFGF-8の発現誘導は見られず,Wnt-10aもWnt-3aと同様にAER形成には直接関与していないようである。 WntレセプターのFrizzled(Fz)ファミリーとしてFz-4とFz-10を同定し,これらが肢芽で領域特異的に発現することを見出した。Fz-10は肢芽後部の背側で発現し,SHHとWnt-7aの共存で誘導され,さらにツメガエルの初期胚でWnt-7aのレセプターとして機能することを確認した。 遠近軸に沿った位置価決定にはGPIアンカー型の膜蛋白質が関与していることを細胞選別の検定によって見出した。その1つのephrin-A2は肢芽基部で強く発現するが先端部では弱く,逆にレセプターであるEphA4は肢芽先端部で強く,リガンドと相補的に発現している。先端部でephrin-A2を過剰発現すると,過剰軟骨塊の形成や中足骨の融合などが見られたが,これらの変化は先端の自脚部に限られていた。過剰発現している細胞同士は肢芽内で集合し,ephrinは間充織の接着性に影響している。 SHH蛋白質によって重複肢が誘導される過程で,BMP-2の発現は一過性にしか誘導されない。最終的な軟骨パターンは24時間以降で誘導されてくるHoxD12,D13の発現と相関しているが,急速に発現が減衰するBMP-2とは一致しない。 後肢芽ではFGF-4蛋白質は単独でSHHとHoxD13の発現を誘導でき,位置価を後方化する。この効果はFGF-4ビーズの基部側にバリアーを入れて細胞移動を阻害しても見られる。しかしながら,前肢芽ではFGF-4によるSHHの誘導は全く見られず,SHH発現の応答能が前肢,後肢で大きく異なっている。
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