細胞周期、特に、G2-M期を調節する転写因子dMybのC末端(負の転写制御領域)を欠損した変異体dMyb-TAは、構成的な転写活性化因子として機能する。このdMyb-TAをショウジョウバエ複眼成虫原基で特異的に働くエンハンサーを利用して、複眼で強制発現させたトランスジェニック個体は、過剰なM期への進行のため、光受容細胞、沈着細胞の欠損に伴う個眼の融合、剛毛の欠損といったruogh eye表現型を示す。D-mybのシグナル経路に関わる遺伝子を遺伝学的に単離するため、この複眼異常の表現型を増強させたり、或は、正常に戻したりする変異体を常染色体の約7割をカバーする欠失変異体プール(約150系統)及びP element挿入変異体の中からスクリーニングした。その結果、ruogh eye表現型を抑圧する変異体を3系統得た。1つは細胞周期においてG2-M期移行を正に調節している調節因子string(CDC25のDrosophilaホモローグ、phosphataseをコード)変異体であり、dMyb-TAによる過剰なG2-M期進行がstring変異体により、抑制されたものと考えられる。2番目は、転写の抑制因子として機能するtrumtrack (ttk : BTB/POZdomainを有する)変異体であった。D-mybとttkの相互作用、及びttkの細胞周期への関与については、現在、解析中である。3番目の変異体は、転写の抑制に関わる因子dmi-2変異体である。複眼成虫原基でdMi-2を欠損し占細胞は、dmybと同様、G2-M期の正の調節因子cyclin Bの発現が見られないことが分かった。また、in vivoの結合実験より、dMi-2とdMybが直接結合することや遺伝学的スクリーニングの結果より、dMi-2変異体がdMyb-TAの過剰活性を抑制することから、dMi-2は、従来考えられてる転写抑制因子ではなく、dMybの転写活性化に関与する活性化因子として機能していることが明らかとなった。
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