腹側線条体の主要部分である側坐核は、腹側被蓋野(VTA)に由来する中脳-辺縁系ドパミン系が、精神分裂病の病因と密接な関連があるということが示唆されて以来、精神分裂病の病因の形態学的基盤に関する主要な研究対象であるだけでなく、最近では、情動運動や報酬系にも関与していることが報告されている。側坐核からの下行性出力は、中脳レベルでは、shellが内側のVTA領域および、黒質の内側領域へ、coreが黒質の外側およびさらに外側のA8領域に投射することが知られているが、A8領域に関してはその機能はあまり明らかにはされていない。そこで、我々は、core領域から密な投射を受けるA8領域、特にA8の尾側部の機能を明らかにするためにその遠心性投射に関して解析した。実験には、抱水クロラール麻酔を施した7週齢Sprague-Dawley系雄ラットを用い、A8の尾側部に順行性トレーサーとしてBDAを注入した。BDA標識終末は、側坐核や腹側淡蒼球に観察された。従来の研究では、背側線条体に密に投射があることが報告されているが、BDA標識終末は、わずかしか観察されなかった。視床への投射は、主としてparafascicular nucleusなど髄板内核に多く観察され、皮質への投射はほとんどなかった。また、扁桃体内側核、不確体、A13/11/10/9ドパミン領域、後交連核の大細胞部、青斑核、結合腕傍核にも順行性標識終末が観察された。以上より、shellおよびcoreが関与する神経回路の中には、よく知られたA9やA10のドパミンニューロン群のみならず、A8、A11、A13など広範囲のドパミンニューロングループが関与していた。また、coreは髄板内核を介して皮質に間接的に情報を伝えることが示唆された。
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