(I)網膜と皮質視覚域からの入力と視蓋前域視索核(NOT)/副視索核(AON)ニューロン間の神経連鎖をWGA-HRP・GABA免疫組織化学二重標識法により分析した。結果は、(1)NOTにおける網膜終末(RTs)は大型で、通常の樹状突起およびシナプス糸球体形成に関わる小胞を含むF2樹状突起[GABA(+)]とシナプス結合していた。(2)AON内のRTsは小型でGABA(-)あるいは'GABA(+)樹状突起とシナプス結合するが、シナプス糸球体に参加することは稀であった。(3)皮質終末(CTs)はNOT/AONで同様な形態を示した。CTsはGABA(+)樹状突起とシナプス結合することはなかった。以上の結果から、(1)RTsとCTsはシナプス結合の態度が異なり、NOT/AONの視覚情報処理過程で質的に異なった機能を反映している、(2)RTsはNOTとAONで異なる形態を示し、視覚情報処理における特異な役割を反映している、ことが示唆された。 (II)NOT/AONの相互連絡、ならびにNOT/AONからOKR関連領域への投射ニューロンの形態・分布を上述と同様な方法で調査した。主な結果は、(1)NOT/AONは互いにGABA陽性投射し合う、(2)NOT/AONから外側膝状体、上丘などへの上行性投射ニューロンはGABA陽性のものが認められたが、下行性投射ニューロンはすべてGABA陰性であった、(3)NOT/AONはOKR発現に興奮性・抑制性の影響を与える。 (III)視覚連合野・外側シルビウス上溝皮質(LS)からNOT/AONへの投与を免疫電顕的に分析した結果、この皮質終末と網膜終末が同一の樹状突起に終止することが確認された。このことは、これまで「OKRは皮質入力に関係なく作動する」との考えに対し、皮質からの入力は網膜入力と共に、もしくは単独に、OKRに影響を与える可能性があることを形態学的に示したものと思われる。
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