研究概要 |
哺乳動物の脳神経系において、主要な興奮性神経伝達物質はグルタミン酸、抑制性伝達物質はガンマアミノ酪酸(GABA)と考えられている。これらの伝達物質は、シナプス直下に存在しイオンチャネルを分子内に持つイオノトロピック型受容体を介して、速い情報伝達を担うと考えられてきた。しかし、近年、よりゆっくりした時間経過での神経細胞の機能調節を担うメタボトロピック型受容体が次々に明らかにされてきた。申請者は、平成10年度、GABAのメタボトロピック型受容体であるGABA@@S2B@@E2受容体をクローニングしたスイスのグループとの共同研究でGABA@@S2B@@E2受容体の抗体を作製し、この受容体が小脳の平行線維-プルキンエ細胞間シナプスに存在することを発見し、さらに2つのサブタイプがグルタミン酸作動性シナプスに共存して、機能的な受容体を形成していることを報告した(Kaupmann et al.,Nature 1998)。これらの研究の過程で明らがとなったことは、抑制性神経伝達物質であるGABAがGABA@@S2B@@E2受容体を介して、グルタミン酸による興奮性神経伝達を調節しているらしいということである。今後の問題点としては、小脳における生理的アゴニストであるGABAがいかなる神経要素から由来し、その結果、グルタミン酸作動性シナプスに対してどのような調節作用を発現しているのかということである。この事を探求するために、GABAの放出部位とそれが作用するGABA@@S2B@@E2受容体、およびそのグルタミン酸作動性シナプスとの空間的位置関係を高解像度で明らかにすることが非常に重要であると考えられ、現在、高解像度免疫電顕法を定量的に解析しているところである。得られた結果は、神経伝達の生理学的研究にも大きな示唆を与えるものと考えている。
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