哺乳動物の脳内においては興奮性シナプスは主にグルタミン酸を、抑制性シナプスは主にGABAを伝達物質として用いている。本研究では、グルタミン酸を感知する受容体のうち代謝調節型のmGluR7が淡蒼球や嗅結節におけるGABAの放出部位に、GABAを感知する受容体のうち代謝調節型のGABABRlとGABABR2が小脳におけるグルタミン酸の放出部位に、それぞれ存在することを示した。電子顕微鏡的に、GABAB受容体は伝達物質の放出のトリガーとなる電位依存性カルシウムチャネルのP typeを形成するサブユニットが認められたのと同じ部位に検出された。これらの結果は、興奮性と抑制性のシナプスがお互いに伝達物質の放出を調節することを通して、作用し合っていることを示唆している。今後は、さらに他の受容体やチャネルの共存を調べると共に、電気生理学的にこれらの受容体を介した伝達調節のメカニズムを明らかにしていきたいと考えている。
|