研究概要 |
1) ビデオに接続した実体顕微鏡でピット膜の血流変化を直接観察・記録しながらの実験は、部品の納入に手間取り3月初にセットアップが完成したばかりなので次年度に回す.しかしドップラー血流計を用いては、赤外線刺激に応答するピット膜血流の局所変化を測定できた。刺激部位とプローブの位置関係及び刺激の強さによって、二通りの血流反応、即ち上がり曲線と下がり曲線を記録した。両者とも神経性血管運動で局所的熱容量を変える事により赤外線感覚神経終末(TNM)を基本温度に戻し、その感度を維持すると推測される。更に神経切断との組合わせ実験で、赤外線刺激に応答する血流変化を引き起こすには赤外線感覚神経(Aδ線維)が必要不可欠である事が判った.この血流変化が末梢におけるTNMの直接作用か、中枢神経系を介する作用か、次年度に明らかにする. 2) ピット膜血管網のアトラスは完成させた。次年度は、このアトラス上に血流変化を記録することにより、ピット膜上の部位別の詳細なデータの解析が可能になる。又、透過・走査顕微鏡による血管網の観察、TNMと網細血管との関係、更に赤外線の立体視部位(ピット膜尾部)の血管分布密度が他の部位に較べ高い事を明らかにした。この部位は網膜における中心窩に相当するピット膜上の部位と推定される。[Anat.Rec.,254(1999)107-115] 3) ピット膜内全域には、(1)TNMに終わるAδ線維(赤外線感覚神経)のみならず、(2)varicositiesを持ち分岐を繰り返すSP/CGRP含有のC線維(侵害受容神経)の神経網が存在する事。さらにピット膜の辺縁部には、(3)AChE陽性の神経線維網(副交感神経)が(2)とは異なった分布様式をもつ事。又、カテコールアミン線維(交感神経)はピット膜内には侵入しないが、周囲の皮膚血管壁に存在する事が判っている。今後これらの個々の神経要素の役割を明らかにしていきたい。
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