研究概要 |
1)科学研究費で購入したビデオおよび実体顕微鏡で、赤外線刺激に対応するピット膜の血流変化を直接観察することは可能になったが、血流変化の速度が速すぎて高速ビデオで記録しないと正確に分析出来ない事が明らかになり、1秒間に500コマ撮影し記録できる装置(高額)を購入する必要が生じたため、次年度以降に回す。しかしドップラー血流計を用いてのピット膜血流の局所変化測定で神経切断と薬物投与の組合わせ実験を行い、赤外線刺激に応答する血流変化の内、最も速い血流変化(刺激後5-15ミリ秒に応答)は赤外線感覚神経(Aδ線維)の末梢終末(TNM)が直接作用している事が判った[投稿中]。 2)以前の研究からピット膜内には、(1)TNMに終わるAδ線維、(2)varicositiesを持ち分岐を繰り返すSP/CGRP含有のC線維、(3)AChE陽性の神経線維が存在する事が判っている。今回電子顕微鏡によりピット膜に入る直前の神経束を観察し、有髄線維約3,000本に対し無髄線維が2倍の約6,000本存在する事が判った[春の解剖学会発表予定]。また、カプサイシン投与により SP/CGRP含有線維の大部分が消失する事が判り、侵害受容の知覚神経である事を証明した。更に、個々の神経要素の役割を明らかにしていきたい。 3)顔面神経にHRPを取り込ませ逆行性に副交感の節前細胞(上唾液核;SSN)を同定したところ、赤外線感覚伝導路の第2中継核(NRC)に隣接しており、一部のSSNニューロンの樹状突起がNRC内に達する事が判った。副交感線維(AChE陽性線維)がピット膜と毒腺に分布している事と考え合わせ、SSNニューロンが直接赤外線情報の影響を受けピット膜血流や毒腺分泌を支配する反射回路を作っていると考えられる。更に、顔面神経運動核(開口筋支配)の一部ニューロンの長い樹状突起もNRC内に侵入している事が判った。
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