研究概要 |
パーキンソン病における黒質ドーパミンニューロンの選択的細胞死に活性酸素類による酸化的ストレスが関与し,ミトコンドリア内での呼吸系障害を引き起こすことによって細胞死に至ることがin vitroの実験系により報告されている。in vivoでこの仮説を証明するために,遺伝的に活性酸素代謝異常を示すミュータントラット(Zitterラット)を用いて,ドーパミンの合成酵素であるチロシン水酸化酵素(tyrosin hydroxylase,TH)に対する抗体を用いて免疫組織化学的に解析を行った。Zitterラットは獨協医科大学実験動物センターにて兄妹交配を繰り返すことによって近交系化したものである。本年度の研究では以下のことが明らかとなった。 (1) 本ミュータントラットでは加齢に伴いセロトニンニューロンが変性しヒトの精神症状に近い神経症状が出現する。 (2) 本ミュータントラットでは黒質ドーパミンニューロンが細胞変性し,この変性が加齢と伴に進行すること。変性する黒質ニューロンは線条体内のmatrixへ投射するニューロンで,patchへの投射は保持される。 (3) 本ミュータントラットでは黒質ドーパミンニューロン系以外のドーパミンニューロン系,嗅球内ドーパミンニューロン系,視床下部ドーパミンニューロン系はほとんど影響を受けないことから,ドーパミンニューロン系の中にも活性酸素に対する抵抗性の差異が存在する。
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