研究概要 |
活性酸素の代謝異常を示すミュータントラットを用い線条体内におけるドーパミンニューロン系の加齢にともなう変化を高速液体クロマトグラフィーおよびチロシン水酸化酵素(TH)抗体を用いた免疫組織化学にて解析した。コントロールとしては同月齢のSD系ラットを用いた。ミュータントラットでは加齢に伴う線条体内ドーパミン(DA)およびその代謝物の低下が観察された。免疫組織化学による解析から、このDAの低下がDA終末の変性変化に起因することが明らかとなった。また、この線条体内のDA終末の変性消失が線条体内で均等に起こるのではなく、線条体内の区分であるマトリックスパッチに一致して起こることを明らかとした。 TH免疫染色により中脳ドーパミンニューロン系(A8,A9,A10)の細胞数を解析した。A9のドーパミンニューロンは線条体内DA変性線維の出現と同じ月齢で変性変化を示していた。この変性・消失は加齢に伴って進行していった。A9のドーパミンニューロンを背側部・腹側部に区分し解析したところ、腹側では早期に変性・消失が起こり、6ヵ月齢までにほぼすべてのドーパミンニューロンが消失していた。一方、背側ではこの変化が遅れ、6ヵ月齢から12ヵ月齢にかけ急激に変性・消失していく。この遅れた変性変化はA8およびA10のドーパミンニューロンにおいても観察された。 6ヵ月齢のミュータントラットで線条体・大脳皮質・脊髄においてセロトニン線維の変性変化が観察された。この変性線維は加齢とともに増加していった。この変化は、SDラットでは、1年齢以上の老齢のものでしか観察されない所見であった。また出現部位もミュータントラットと老齢SDラットでるいじしていることから、老化に伴うセロトニン線維の変性変化にスーパーオキサイドが関与することが示唆された。
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