研究概要 |
網膜や視交叉上核におけるc-fos遺伝子の発現は周囲の明暗環境に依存していることがラットで明らかとなっている。このことは哺乳類の日内リズム形成が脳において分子レベルで制御されていることを示唆している。 今回われわれは、12時間明期,12時間暗期の環境下で正確に飼育したラットの大脳新皮質におけるc-fos mRNAの24時間内の発現様式を,in situ hybridization法を用いて調べた.明期の始まり30分から1時間後において,c-fos mRNAは大脳新皮質および視交又上核に強く発現していた.この大脳新皮質におけるc-fos mRNAの発現の上昇は,明期の始まりより2時間後には減弱し,その後の明期においてはc-fos mRNAのシグナルはほとんど観察されなかった.一方,暗期の始まる2時間前にはすでにc-fos mRNAの発現が上昇しており,その後の暗期においては持続的に発現の上昇が見られた. 大脳新皮質での明期の始まりにおける一時的なc-fos mRNAの発現は,以前の報告にみられるラット網膜の内顆粒層,神経節細胞層の発現に,暗期での持続的なc-fos mRNAの発現は網膜の外顆粒層での場合にそれぞれ類似しており,両者の相関が示唆された.
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