研究概要 |
本研究では、ストレスやアポトーシスのシグナル伝達に関与するJNKの中で、特に脳神経系に強く発現が認められるマウスJNK3に相互作用するJSAP1及びJNKBP1の解析を行った。 1.JSAP1の解析:(1)JSAP1は脳神経系で強い発現が認められ、さらにERK2, p38MAPK, JNK1-3の各MAPキナーゼ野中でJNK特にJNK3に強く結合する。(2)JSAP1はJNKキナーゼであるSEK1/MKK4あるいはJNKキナーゼキナーゼであるMEKK1とJNK結合領域とは違う領域で結合する。(3)JSAP1は坑JSAP1抗体の解析より細胞質に局在する。(4)JSAP1は活性化JNK3によって、リン酸化される。(5)JSAP1のSEK1/MKK4とMEKK1の結合領域を欠失させたタンパク質は、構成活性型MEKK1によるJNKカスケードを介したアポトーシスを阻害する。(6)JSAP1をMEKK1とともに神経系に分化したP19細胞に過剰発現させると、JNKカスケードのシグナル伝達の促進が認められる。(7)JSAP1に対するポリクローナル抗体を作製し、マウス成体脳において免疫組織化学的解析を行ったところ、海馬CA1、CA3の錐体細胞、大脳皮質ニューロン、小脳のプリキンエ細胞にその存在が認められる。(8)細胞増殖や分化のシグナル伝達に関与するMAPKカスケードの1つ、ERKカスケードのメンバーcRaf1(MAPKKK)とMEK1(MAPKK)と相互作用することにより、ERKカスケードの活性化を負に制御する。 すなわち、JSAP1は、JNKカスケードのスキャホールドタンパク質としてだけでなく、ERKカスケードを制御する多機能なMAPKカスケード制御タンパク質であると考えられる。このことはMAPKカスケード間のクロストーク、さらに神経細胞の分化、維持あるいはアポトーシスの制御機構を考える上で興味深い 2.JNKBP1の解析:(1)JNKBP1は、JNK3と同様に脳と精巣で多く発現が認められる。(2)MAPKKKであるMEKK1あるいはTAK1を培養細胞にJNKBP1とともに遺伝子導入すると、JNKカスケードの活性化の増大が認められる。 JNKBP1は、JSAP1と構造上異なっているものの同様のスキャホールド的な機能を保持している可能性がある。
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