研究概要 |
てんかん発作中にcerebral blood flow(CBF),cerebral metabolic rate for oxygen (CMRO_2),cerebral metabolic rate for glucose(CMR_<glc>)が著しく上昇すること、アミノ酸濃度が変化すること等が知られているが、脳内アミノ酸代謝に関する報告はほとんどされていない。そこで、てんかん発作がGlutamate-glutamine cycleやGABA-glutamine cycle(グリアと神経細胞の代謝的交流)及びグリアに局在しているpyruvate carboxylase(PC)の活性に与える影響について調べた。ラットにbicucullineを投与し(Bic群)、3分後から[2-^<13>C]-ブドウ糖を20分間にわたり連続投与し、脳内アミノ酸の各位の炭素への^<13>C組み込み量を分析用NMRスペクトログラフィー法で測定し、Sham群とBic群とで比較検討した。Bicuculline投与直後からEEG上で、てんかん発作波が記録され実験終了時まで続いた。^<13>C組み込み量で、PC活性とアセチールCoAを介する系の活性比(Glu-3/Glu-5とGln-3/Gln-5)及びGlutamate-glutamine cycle活性(Gln-3/Glu-3とGln-5/Glu-5)を調べると、いずれの比もSham群とBic群の間で差が認められないことから、てんかん発作中にPC活性及びGlutamate-glutamine cycleの活性のいずれも変化していないことが明らかとなった。GABA-3/Glu-3及びGABA-3/Gln-3の比はBic群(0.310,0.337)でSham群(0.144,0.135)に比べ2倍強に増加しており、また、GABA-1/Glu-5およびGABA-1/Gln-5の比もBic群(0.127,0.475)でSham群(0.066,0.265)に比べ2倍弱に増加していた。一方、GABA-3/GABA-1の比は両群で差がなかったことから、グリア由来のGlnを基質としたGABA(GABA-glutamine cycle)合成が、てんかん発作中に著しく増加していることが明らかとなった。この事実は、神経細胞由来のGluを基質としたGABA合成系は、てんかん発作中に変化していないことを示している。
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