研究概要 |
サルにMPTPを片側性内頚動脈投与することによって反側性にパーキンソン病(PD)症状である筋固縮、無動、振戦等を示すことが知られいる。一方、線条体,黒質のドーパミン神経の変性に伴い、視床下部から大脳皮質への興奮性神経支配の活性が低下することが知られている。そこで、我々が開発した高磁場^<13>C-MRSマルチボクセル法を利用し、脳基底核神経変性に伴う皮質領域の代謝活性変化を捉えることを目的として実験を行った。 カニクイザルの左側内頚動脈より1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydro-pyridine(MPTP)を投与し、3日、6、9,10週後に、非侵襲的^<13>C-MRSマルチボクセル法により、左右大脳のグルタミン酸合成速度(Vglu)を同時に求め、左右を比較検討した。グルタミン酸は主に神経細胞で合成されている。MPTP投与後10週目は測定時にL-DOPAを投与した。MPTP投与前のVgluは大脳左側(0.489,0.478μ mole/min/g,n=2)、右側(0.475,0.505μ mole/min/g,n=2)間に差はなく(左側/右側;L/R=1.03,0.95,n=2)、投与後3日目、6、9週目にはMPTP投与側のVgluが非投与側に比して減少していた(L/R;3日後=0.89,6週後=0.52,9週後=0.77)。10週後に測定時にL-DOPAを静脈内投与したところ、左右側のVgluはほぼ等しい値(L/R=0.96)を示した。MPTP投与後11週目に剖検を行い、thyrosine hydroxylase(TH)に対する免疫組織染色を行ったところ、線条体(被殻と尾状核)のTHが、MPTP投与側で著しく減少していることが示された。今回の実験結果より、MPTP投与による線条体ドパミン神経細胞の変性・脱落により観測領域(大脳皮質部)のVgluが低下する事が明らかとなた。
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