脳ではブドウ糖が唯一のエネルギー源であり、ブドウ糖の炭素鎖は解糖系、TCA回路を介して、グルタミンや神経伝達物質であるグルタミン酸、アスパラギン酸やGABA等のアミノ酸へ取り込まれる。[1-^<13>C]ブドウ糖をラット、サルに投与し、脳内のそれらアミノ酸への^<13>C取り込み量を測定することにより脳のブドウ糖-アミノ酸代謝を知ることができる。我々は、磁気共鳴^<13>Cスペクトロスコピー法(^<13>C-MRS)で、脳のブドウ糖-アミノ酸代謝を測定し、1)脳のアミノ酸代謝におけるニューロンとグリア細胞間での代謝的交流(trafficking)、2)脳機能変化に伴うアミノ酸代謝の変化をex vivoで検討するとともに、3)非侵襲的^<13>C-MRSにより、in vivo脳内グルタミン酸合成速度(Vglu)を算出し、脳機能疾患(パーキンソン病モデルサル)に伴うVgluの変化を検討した。その結果、l)グリアで合成されたグルタミンが神経伝達物質であるグルタミン酸、GABAの前駆体として利用されていること、2)その代謝系が反復電気痙攣刺激に伴い活性低下を引き起こすことが明らかとなり、また、3)大脳基底核ドーパミンニューロンの変性により大脳皮質のVgluが低下することを見いだした。これらの結果は、脳のアミノ酸代謝が脳機能と密接に関連していることを示しており、また同時に非侵襲的^<13>C-MRSの臨床応用への有用性を示している。今後、さらに脳アミノ酸代謝におけるtraffickingの神経伝達物質合成における重要性をex vivo系で明らかにし、非侵襲的測定(in vivo)への応用を最終目的として研究を進める。具体的には、グリア細胞でのみ代謝されると考えられているアセテートの炭素が^<13>Cでラベルされている基質を利用する。
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