有髄神経軸索の神経興奮伝導に関与する電位依存性チャネルはきわめて特徴的な局在を示す。すなわち、電位依存性Na+チャンネルは有髄線維のランヴィエ絞輪部に局在するのに対して、K+チャンネルは主に絞輪の両側、ミエリンの両端が軸索に接するparanodeの近傍に分布する。われわれは、この電位依存性K+チャネルの局在化に対するミエリン膜の関わりを以下のようにして明らかにした。 1) 正常な成熟マウス視神経において、K+チャンネルの局在化は有髄の部分のみでみられ、同一軸索上でも無髄の部分では均一に分布していた。 2) 電顕および免疫組織化学的解析によって、発達段階のマウス視神経では、ミエリン膜が完全に形成されてからK+チャンネルがjuxtaparanodeに局在化することがわかった。 3) 脱髄を生じたマウスの脊髄および視神経において、K+チャンネルの局在化は消失した。 4) ミエリン形成不全マウスの脊髄において、K+チャンネルは無髄神経と同様に均一に分布するが、ミエリン膜の形成された部分においては局在化が認められた。 5) シナプス後膜部におけるK+チャンネルの局在化に関連するPSD95タンパク質分子が、軸索上でもK+チャンネルと同一部位に局在化し、かつ発達段階ではこの二つの分子の局在化の時期はほぼ一致した。 これらの結果、軸索上のK+チャネルの特徴的な局在化とその維持に関してミエリン膜、特にparanode部分の形成が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。また、軸索側の要因としては、シナプス部でチャネルやNMDAレセプターの局在化に関与するPSD95が軸索上のチャネルの局在化にも関与していることが推測された。
|