ノシセプチン受容体はリガンド不明のオピオイド受容体類似蛋白質として同定されたが、後に内在性のリガンドとしてノシセプチンが精製された。我々はノシセプチン受容体欠損マウスを作製し解析することにより、ノシセプチン受容体欠損変異は記憶学習と長期増強のgain of functionの表現系を示すことを証明し、ノシセプチンによる情報伝達は正常個体において記憶学習と長期増強の負の調節をすることをすでに報告した。また、我々がノシセプチンーノシセプチン受容体系の疼痛閾値を下げる効果に拮抗するアンタゴニストとして同定したナロキソンベンゾイルヒドラゾンは、さらに記憶学習と長期増強の調節においてもノシセプチンのアンタゴニストとして作用することが行動学の実験から示された。このことにより、ノシセプチンーノシセプチン受容体系の全く新しい抗痴呆薬としての可能性が示唆された。 脊髄に特異的に発現している蛋白質の単離を目的として、サブトラクション法による遺伝子クローニングを行い、Rho^○ファミリーに属する新しい遺伝子を単離した。RhoNと命名したこの遺伝子は、ニューロンと肝臓のstellate細胞のみに発現が認められ、これまでのRho^○ファミリー遺伝子にはない組織特異的発現を示した。しかしながら、RhoNは他のRho^○ファミリーの特徴であるボツリヌスC3毒素によるADP-ribosylaionは受けず、その生理的機能はこれからの課題である。
|