ヒト神経細胞でのiNOS遺伝子のサイトカイン刺激による発現誘導に関わる細胞内シグナル伝達系におけるIFN-γの役割は、TNF-αおよびTNFレセプターII(TNF-RII)の発現誘導によるTNFシグナル伝達系の活性化を担っていることを明らかにした。この誘導はNF-κB活性化阻害剤PDTCにより完全に抑制され、NB-39-nu細胞でのTNF-αおよびTNF-RII下流でのNF-κB活性化がiNOS遺伝子発現誘導に関与していると考えられる。NF-κBコンセンサス配列を用いたゲルシフトアッセイの結果、TNF-α単独ではiNOS発現誘導を示さないNB-39-nu細胞においてもTNF-α刺激後15分よりNF-κBの活性化が認められ、その活性化は2時間をピークに消失し6時間後には完全に認められなくなった。一方、iNOS遺伝子転写開始点近傍に存在するNF-κB様配列を用いたゲルシフトアッセイでは、NB-39-nu/TNF-RIIのTNF-α刺激によりTNF-RIIの発現が無いベクターのみを導入したNB-39-nu細胞では検出されない配列結合タンパク質の活性化が処理後6時間後より認められ、その活性化は18時間後まで維持し以降消失した。ゲルシフトアッセイにより得られたNF-κB様配列結合タンパク質活性化の経時変化は、iNOS mRNA発現の経時変化と極めて酷似していることから、神経細胞でのiNOS発現誘導には、従来のNF-κBとは性質の異なるNF-κB様タンパク質の活性化を介していると考えられる。このように、神経細胞でのiNOS発現誘導にはTNFおよびTNF-RIIシグナル伝達系を介する新たなNF-κB様タンパク質の活性化が神経細胞特異的なiNOS発現制御機構を担っている事を明らかにした。
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