研究概要 |
<目的>アルツハイマー病(AD)原因遺伝子産物プレセニリン1(PS1)はアミロイド前駆体タンパク質(APP)代謝に関与し、アミロイド線維を形成するAβの産生を制御していることが知られている。そこで本研究ではヒトPS1および突然変異型PS1を安定的に発現するPC12D細胞を用いて、PS1とAPPC末断片の細胞内の分布、量的な関係等を解析し、PS1がAPPC末断片の代謝にどのように関与するのか検討した。<方法>(1)ヒトPS1および突然変異PS1(A260V)を安定的に発現するPC12D細胞を0.25M sucrose溶液でホモゲナイズした後、1,000×gの遠心上清をさらに遠心し、5,000×g沈殿画分(P2a)、8,000×g沈殿画分(P2b)、100,000×g沈殿画分(P3)に分画した。(2)それぞれの画分に含まれるAPPおよびAPPC末断片の存在量、PS1の存在量等を、電気泳動、イムノブロッティング等を用いて解析した。(3)細胞内でのγ分泌酵素活性(Aβ40およびAβ42)をドットブロットにより測定した。<結果>PS1およびPS1A260Vを安定的に発現するPC12D細胞および野生型PC12D細胞において以下のことが明らかとなった。(1)αおよびβ分泌酵素による切断活性との間の関連性は見出せなかった。(2)突然変異の有無での差は見られなかった。(3)各膜画分におけるAPPCTFの量比を野生型のものと比べると、P2a画分に含まれるAPPCTFの量が有意に増加していた。(4)野生型に比べると、Aβ42活性の増加が見られた。<考察>導入したPS1は突然変異の有無にかかわらずPC12D細胞内でAPPCTFの分布を変化させることから、PS1はAPPCTFの輸送を担い、その輸送に障害が生じるとAβ42活性が上昇すると推定された。
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