研究概要 |
【目的】リズムミュータントマウスとしてのCS系は特異なサーカディアンリズムを行動上に示す(恒暗条件でのリズム分割など).この特徴からCS系は体内時計に変異を持つことが考えられる.今回,その変異の分子レベルでの検証を目的として,時計関連遺伝子であるmPerl,ClockおよびBMALl遺伝子のCS系視交叉上核(SCN,哺乳類の体内時計)における発現と行動リズムパターンの関連性を検討した. 【方法】CS系の回転輪活動のフリーランリズムを恒暗条件下で記録し,リズム分割を示す個体(split群)と示さない個体(non-split群)に分けた.リズムの6位相でマウスを断頭し,SCNでの.mPerl,Clock,BMALl mRNA発現をin situ hybridization法により確かめた.コントロール群として,リズム分割を示さないC57BL/6J系マウス(B6)で同様に行った. 【結果と考察】CS系non-split群およびB6系では,SCNのmPerl mRNAは主観的昼に,ClockおよびBMALl mRNAは主観的夜にピークをもつ一峰性のリズムが見られた.これらの結果は行動リズムの一峰性パターンと一致していた.しかしCS系split群では,行動リズムが明確な二峰性パターンを示しているにも関わらず,mPerl,Clock,BMALlすべてのmRNA発現パターンは,non-split群,B6系と同じ一峰性であった.これらの結果から,CS系マウスの行動リズム異常の原因は,SCNのサーカディアン振動体の変異によるものではなく,SCNから振動情報を行動系へ伝える出力系にある可能性が示唆された.このことからCS系は,これまで研究対象とされることの少なかった振動体からの出力系を理解する上で有効なモデルマウスとなると考えられる.
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