研究概要 |
レレチノイン酸には形態発生に際して重要なHoxなど特定の遺伝子群の発現をコントロールする機能があることが解明されてきた。 小脳は、神経系のうちでも、特異な構造と発生過程をしめす。成熟動物の小脳は大きく中央部の虫部、両側の半球部にわけられ、更に前後方向に1-10までの小葉に分けられる。ところが、形態学的には同じプルキニエ細胞が実は分子的に異るポピュレーションからなりこれらは小葉に直交する形で、前後方向にのびる幅数ミリの帯状構造を形成する。これを小脳コンパートメントとよぶ。 このコンパートメントがどのように形成されてくるか、その分子機構をさぐるため、本年度は、レチノイン酸に関る遺伝子群の発現を発生の各段階で調べた。 レチノイン酸はレチノイン酸レセプターと結合し、その結合物が、直接DNAの特定シークエンス(RARE)に結合することにより、遺伝子を活性化することが知られている。レチノイン酸レセプターには現在RARとRXRが知られている。それぞれα,β,γのサブタイプがあり、計6種類ある。さらに、COUP-TF1、TF2など、レチノイン酸レセプターに対して拮抗的に作用するレセプターファミリーもある。これら8種類の分子について、その発現パターンの発生過程での変化をNorthern bIot、in situ hybridizationにより調べる。我々は、既にこのうちの幾つかの遺伝子が胎生期の小脳に帯状に発現し、そのパターンが、発生がすすむにつれ縞の数と位置が変化することを観察し、報告した。 小脳では、転写調節因子のEn1,En2,Wnt3,Wnt7bなどが、胎生期に帯状に発現することが知られている、これらの遺伝子発現とレチノイン酸レセプターの発現とを比較したところ、En2とは相補的に、また、Wnt7bとは、特定の小葉において、同じコンパートメントに発現していた。
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