研究概要 |
扁桃体は恐怖情動の発現,学習・記憶に関与していることが,これまでの覚醒下ラットのニューロン活動の解析から明らかになった.一方,海馬体は場所学習・記憶に重要な働きをしており,海馬体の損傷は8方向迷路や水迷路の学習を障害することが報告されている.しかし辺縁系の主要構成要素である海馬体と扁桃体がどのように連合して機能しているは明らかでない.本年度は動物がある特定の場所に来たときに電気ショックを与えるという場所と恐怖条件付けを連合させた学習課題を開発し,場所に連合した恐怖情動学習の行動学的特性および中枢機序の一端をを明らかにした.60x60x30cmの大きさのオープンフィールドの床に1.5cm間隔で直径4mmの金属棒が並べられ,その上2mに動物の居場所を測定するためのテレビカメラが設置されている。天井には外部手掛かり刺激としてランプが対角方向にそれぞれ一個づつ合計4個取り付けられている。カメラと接続されているパソコンを用いてラットがオープンフィールドのある特定の場所に来たときだけ床に電気ショックを与え,電気ショックを回避する行動を学習させた。電気ショックを与える場所(ショック領域)はオープンフィールド内の任意または特定の場所にプログラムで設定でき、この学習課題ではランプと対応した1/4区画をショック領域とした。 その結果,1)場所の恐怖条件付けは2日間(1セッション,3時間)の条件付け訓練により,ショック領域を避ける行動を獲得した.2)電気ショックに関する場所の記憶は少なくとも10日までは持続していた.3)学習成立後,扁桃体中心核または外側基底核損傷により場所の恐怖連合記憶は障害され,ショック領域を避ける行動が出来なくなった.4)扁桃体損傷後の場所の恐怖条件付け学習は出来なくなった. これは場所一恐怖連合学習課題においても扁桃体が関与している可能性を示唆している.今後は場所学習に関与する海馬体損傷の影響も調べることを計画している.
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