最近、一次求心性C線維から脊髄細胞へのシナプス伝達がA線維への条件刺激によって長期抑圧されることが明らかになり、触圧刺激による痛覚の長期抑制メカニズムとして注目されている。また、C線維終末から放出される痛みの伝達物質サブスタンスPを投与した後の脊髄細胞樹状突起の形態は、投与しないものの形態と統計的に異なる事から、痛覚過敏などは形態変化によって生じる可能性や、オピエートがそれをリセットする可能性が議論されている。本研究では、電位感受性色素でシナプス伝達の変化を計測すると共に、生きた脊髄スライス内の樹状突起と軸索が条件刺激で伸縮・移動するかをレーザースキャン共焦点顕微鏡でリアルタイム撮像することを試みた。 その結果、A線維への高頻度条件刺激によって、脊髄内のGABAおよびグリシンを介した抑制性の神経活動が盛んな時は長期抑制、低調な時は長期増強が生じる事が明らかになった。また、低頻度条件刺激では脊髄内の抑制性の神経活動の如何にかかわらず長期抑圧が生じ、また、高頻度条件刺激によって生じた長期増強をリセットできる。 また、オイルドロップ染色法により脊髄細胞樹状突起を染色し、その形態をリアルタイムで計測しつつ長期増強を生じさせるに必要な条件刺激を与えたところ、樹状突起の節の直径が長期的に変化することを示す実験結果が得られた(平成11年度日本神経科学会で口演発表)。現在、その結果を取り纏め中である。
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