我々は、E10マウス胎児の頭部神経管細胞から、分岐したDeltaをコードする新規遺伝子をクローニングした。この遺伝子は、9個のエクソンからなり、第七染色体に存在している。新規Delta遺伝子の機能を解明する第一歩として、in situハイブリダイズ等でその発現パターンを解析したところ、神経管の表層近くに存在する最も早生まれのニューロンのうち、一部の細胞が一列の層を作りDll3を発現していることが明らかとなった。大脳では、最も早生まれのニューロンは、preplateという一過性の層を作り、層構造形成を調節する。この遺伝子は、preplateの一部であるsubplate neuronに選択的に、かつ一過的に発現する。ショウジョウバエDeltaの機能から類推すると、この遺伝子は大脳層構造形成過程で他の細胞になんらかの情報を与え、層構造形成を調節している可能性が極めて高いと考えられた。preplateは形態学的に同定されたもので、マーカーすら知られていない。この新規Delta遺伝子は、初めて同定されたpreplateのマーカーであり、この遺伝子の解析を通してpreplateの機能が明らかになる可能性がある。 この新規遺伝子の機能を直接的に証明するため、共同研究でジーンノックアウトマウスの作製をおこなっており、現在ターゲッテイングベクターの構築が終わった段階で、ES細胞を用いて相同組換えをおこなっている。更に、新規Delta遺伝子の細胞外ドメインを大腸菌で発現させ、ウサギに強免疫して抗体も既に得ている。この抗体は、ウェスタンブロッテイングや免疫組織化学による発現パターンの解析のみならず、細胞生物学的解析において、中和抗体として阻害実験にも使用する予定である。
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