神経系においては、ニューロン、シナプスはより数多くの保持細胞(グリア、シュワン細胞)こ覆われている。ニューロン・グリア間にシグナリングが存在することは脊椎動物、無脊椎動物の神経系で認められている。イカ巨大神経線維からシュワン細胞を酵素処理によって単離し、ホールセル電位固定法を適用しイオン電流を測定した。2種類の電流が再現性よく記録された。L-型Ca^<2+>電流と、Ca^<2+>-activatedK^+電流である。パッチクランプ法で40pSのカリウムチャネルが同定された。シュワン細胞で認められたL-Ca^<2+>チャネルとCa^<2+>感受性K^+チャネルの存在は細胞膜電位が-40mVであることを合理的に説明する。シュワン細胞質をCa^<2+>感受性蛍光色素Fluo-3でロードし、イオン、物質による細胞内Ca^<2+>濃度変化を調べた。細胞をK^+で脱分極すると蛍光強度は上昇し、細胞内のCa^<2+>濃度の増大が見られた。外液のCa^<2+>をEGTAで取り除き同様の実験を行ったが蛍光強度の上昇はまったく認められない。細胞内Ca^<2+>チャネルを活性化するCaffeineも影響は認められなかった。さらに、仮想的な伝達物質と考えられているL-glu、AChは細胞内Ca^<2+>レベルに対して有為な変化を引き起こさなかった。その原因として、以下の2点が考えられる。一つは、細胞単離の酵素処理過程でこれら伝達物質の受容体分子が機能を失ったこと。もう一つは、L-glu説の根拠となる微小電極の挿入時に刺し口からCa^<2+>が細胞内にリークする可能性である。この解決にはインタクトな神経標本のシュワン細胞をCa^<2+>感受性蛍光色素でロードし、L-gluとAChの効果を調べることである。この実験は適当な測定装置を作ることによって可能となる。シグナリングの実態はまだ不明である。
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