研究概要 |
本研究は、シナプス小胞(Sv)の神経末端での存在様式、挙動を、生体で観察することによって、シナプス信号伝達の分子機構を明かにすることを目的とした。 研究代表者らは、Betzらが開発した蛍光色素FM1-43をショウジョウバエ変異株(shibire)に適用して、endocytosisによって形成される神経末端の全Svを蛍光標識することに成功した。その結果、神経末端のboutonに存在するSvには2種類あり、ひとつは、通常のexocytosis-endocytosisサイクルに関与しているSv群(exo/endo cycling pool)で、主にboutonの末端部分に存在する。もう一つは通常のexocytosis-endocytosisサイクルに関与しておらず、主にboutonの中心部分にあり、補給に関与していると考えられ、reserve poolと名ずけられた。actin繊維の脱重合をおこすcytochalasin Dを処理すると、reserve poolに相当するSvは消失したが、exo/endo cycling poolは変化しなかった。このとき高頻度刺激によるシナプス伝達は速やかに消失した。このことは、reserve poolのSvが高頻度の伝達物質放出の維持に関与していること、細胞骨格のactin繊維がreserve poolの形成に重要な役割をもっていること、が明かになった(Neuron 1998,20,917-925に発表)。神経切断、Cyclosporin A,cytochalasin D,forskolin投与など様々な処理をした場合、exo/endo cycling poolの大きさとquantal contentには関密な平行関係があることから、exo/edno cycling poolのSvが直接に伝達物質の放出に関与しており、活動電位で誘発されて放出される量子の数がexo/edno cycling poolのシナプス小胞の数に依存していることが見つけられた(J.Neurosci.1999,19,1557-1565に発表)。
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