上丘-小脳間の神経経路に関する解剖学的研究としては、ラットを用いて、主として上丘からの入力を受けると言われている小脳虫部の第6・7葉において、軸索投射の構築の解析を行ってきた。そこへの入力線維、および、そこからの出力線維の単一軸索形態の詳細を、ビオチン化デキストランアミン(BDA)による順行性標識によって調べた。登上線維については、分枝の様子を明らかにし(投稿中)また、下オリーブ内の隣接したニューロン群は、小脳の縦方向の細い縦ゾーン内に投射することを明らかにした(研究発表の3)。苔状線維については、単一軸索が、横方向に広がり、複数の小脳核にも投射することを明らかにした.(発表の2)。小脳皮質からの出力であるプルキンエ細胞の単一軸索の投射についても解析中である。 多電極記録による実験としては、小脳皮質の多数のプルキンエ細胞から登上線維の活動を直接反映する複雑スパイクの記録を行った。麻酔下のみならず覚醒ラットでも、細い縦ゾーンで内では、複雑スパイクの発火の同期性が強いことを明らかにした(発表の1、4)。また、新しい多電極記録システムの開発も進めてきた。記録用の電極としては、多電極表面接触型ブロックおよび、刺入型4チャンネル電極は試作した。動物への埋め込み用には、油圧式の顕微鏡ステージ用マニピュレーターを用いることにした。一方、記録用の多チャンネル増幅器としては、パソコンのPCIバス用の最新のA/D変換ボードに手製付加回路を付けることによって、512チャンネルのアナログ高速連続記録ができることが分かり、その付加回路を製作中であり、次年度に完成させる。
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