1.本年度は、主として、ラットを用いて上丘-小脳間の神経経路に関する解剖学的研究を行った。小脳では、主として上丘からの入力を受けると言われている小脳虫部の第6・7葉、及びその他の部位において、主要な入力線維である苔状線維と登上線維及び、出力線維であるプルキンエ細胞の軸索の単一軸索形態の詳細を、ビオチン化デキストランアミン(BDA)による順行性標識によって明らかにした(研究発表の3と4)。単一登上線維は、小脳内で数本の太い枝と多数の細い枝を出し、太い枝は登上線維としてプルキンエ細胞に終止し(研究発表の1)、細い枝はその軸索側枝として小脳核と小脳皮質顆粒層に終止した。それらの枝は、小脳皮質において、縦方向の細い縦ゾーン内の1〜2個のセグメント状の領域に投射した。下オリーブ核内部の微小な範囲に存在するニューロンは、共通のセグメントに投射し、やや離れたニューロンは、同じ縦ゾーン内の異なるセグメントに投射していた。これは、小脳皮質のゾーン構造内の機能的区分を示唆する(研究発表の5)。 2.上丘から、下オリーブ核を経て小脳に投射する経路について、順行性標識法により単一軸索の形態について解析した。上丘から下オリーブへの投射軸索は、下オリーブの内側副核の尾側・内側に投射し、かつ、1本の軸索の投射範囲は、吻尾側方向に細長く限局していた。これは、下オリーブ核内の細かい機能区分を示唆する。上丘-下オリーブ投射と下オリーブ-小脳投射の特徴を合わせてみると、上丘の中の小さい範囲の出力細胞が、対側の下オリーブ核の微細範囲に投射し、さらに上丘と同側の小脳皮質の少数本のゾーン状範囲に投射するという、機能的部位対応が示唆される(投稿準備中)。今後は、解剖学的実験と多電極記録法によって上丘-小脳間の神経経路の機能構築を更に検討する。
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