研究概要 |
1.「上丘-小脳間の神経経路に関する解剖学的実験」については、上丘から下オリーブ核を経由した小脳への投射パターンに関して、成果を発表した。さらに、この問題はより一般的に、「下オリーブ核小脳投射の小脳皮質の区画構築に対する寄与」として捉えられることが分かった。発表内容の概略は以下の通りである。小脳皮質に投射する単一下オリーブ核ニューロン軸索の投射様式を解析することにより、この投射の小脳皮質の機能区分に対する寄与を調べた。ラットの下オリーブ核にビオチン化デキストランを細胞外微小注入して投射軸索を標識し、34本の単一軸索を連続切片から再構築した。単一軸索は平均7本の登上線維を持ち、単一または複数個の、正中線からの距離がほぼ同じ、細い縦の帯状の範囲(「セグメント)に投射した。個々のセグメントは、単一の小葉上または、少数の小葉にまたがって存在した。近傍の下オリーブ核ニューロンは、小脳皮質において同じセグメントに投射した。やや離れたニューロンは、吻尾側方向にずれた別のセグメントに投射したが、これらのセグメントは同一の縦の細いバンド上に存在した。これまでに良く知られているA, B, C, D等と呼ばれる小脳皮質の縦のゾーンは、幾つかの縦の細いバンドで構成され、ここのバンドはさらに複数のセグメントで構築されていると考えられた。セグメントは小脳皮質の微細な構築区画であり、小脳皮質の機能単位を表す可能性がある。 2.「多電極記録法を用いた実験」に関しては、現在継続中である。また、本年度の交付申請書に特に記載したことではなかったが、以前からの研究がまとまったものとしては、急速眼球運動の発生と関係の深い内耳の耳石器が、豊富なアセチルコリン性の遠心神経支配を受けることを電子顕微鏡的に明らかにして発表した。
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