研究概要 |
マイコン用入力装置(ジョイスティック)を操作しているサルの海馬体および海馬傍回からニューロン活動を記録し,i)サル用自動車を駆動させることにより実際に空間内を移動する課題(RN/TC課題),ii)自動車および液晶ディスプレイ上のポインタを連動させて移動させる課題(RN/P-TC課題),iii)自動車を固定した状態で,液晶ディスプレイ上に2秒間だけ表示される目的地を記憶し,その後ポインターをその目的地に移動させる課題(VN/P課題),iv)自動車を固定した状態で,液晶ディスプレイ上のポインターを画面上に常に表示されている目的地に移動させる課題(VN/P-TC課題)の4種類の課題に対するニューロンの応答性を解析した。その結果,サル海馬体および海馬傍回から記録した総数389個のニューロンのうち,166個(42.7%)が場所識別応答を示した(場所識別ニューロン)。各課題において,各々の場所識別ニューロンの場所フィールド(活動が上昇する領域)は任意の領域に存在し,特定の領域に分布する傾向は認められなかった。また,これら場所識別ニューロンは海馬体および海馬傍回に広く分布しており,局在は認められなかった。一方,場所識別ニューロンは,非識別ニューロンと比較して平均インパルス放電頻度が有意に低いことから,場所識別および非識別ニューロンはそれぞれ錐体細胞および抑制性の介在細胞に相当すると推測された。さらに,ほとんどの場所識別ニューロン(89.8%)は,1)4課題のうち1課題だけに選択的に応答するか,あるいは2)2課題以上に応答した場合は各課題で異なる場所フィールドを有し,課題識別性が非常に高いことが判明した。これらのことから,各課題(状況や環境)ごとに異なる特性を有するニューロン集団が海馬体および海馬傍回内に形成され,各課題を符号化していることが示唆された。
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