ラット足底部皮膚より単離したメルケル細胞にパッチクランプ法を適用して、同細胞膜のCa依存性Kチャネル電流の性質を調べた。全細胞電圧保持法適用下で、-100〜+100mVのランプ状電位変化(50mV/秒)は、N形の電流-電圧(I-V)関係を作った。最大電流活性は、38.0±10.6mV(N=14)で生じた。無Ca細胞外液叉は2mMEGTA含有外液の投与はN形のI-V関係を消失した。一方、細胞内CaプールからCaイオンを放出するカフェイン(10mM)の細胞外投与は、-30mVの保持電位でコンダクタンス増大を伴う一過性の外向き電流(Icaf)を惹起した。その逆転電位はKイオンの平衡電位に近かった。IcafとN形I-V関係の最大電流値はどちらもKチャネル阻害剤であるTEA(1mM)の細胞外投与で40%以下に減少された。inside-outパッチでは、150mM KCl内外液中で280pSのコンダクタンスをもつチャネル電流が見い出され、そのチャネル電流の向きは0mVで逆転した。さらに細胞外Kイオン濃度を5mVに減少すると、逆転電位はKイオン選択チャネルとして期待されるように移動した。チャネルの開状態確率は細胞内Caイオン濃度の増大に伴って上昇し、脱分極で増加した。これらのデータは、メルケル細胞膜に大コンダクタンスのCa依存性Kチャネルの存在すること、そして、脱分極刺激やカフェイン投与によるチャネル開口で細胞に過分極をもたらすことを示す。これまでの報告では、メルケル細胞は機械刺激を受容すると細胞内Ca濃度を増やすことや、同細胞へのL型Caチャネルの存在が明らかになっている。今回見出されたCa依存性Kチャネルの活性は、これら細胞内Ca濃度増加時に細胞の興奮性を抑制するように働くものと思われる。
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