本年度は以下の2項目についての研究を実施した。 1 ネコ前庭脊髄路単一軸索の頚・胸・腰髄部における多髄節支配様式の解析: ネコ(8匹)の外側前庭神経核(ダイテルス核)に順行性神経標識物質(PHA-L)を微量圧注入し、8-9週間の生存期間ののちに動物を灌流固定し脳・脊髄組織を摘出しだ。脳幹および脊髄(頚・胸・腰髄)の50μm連続横断凍結切片を作成し、これらの切片標本をもとにPHA-L順行性標識された網様体脊髄路線維および終末の脊髄内分布を解析した。さらに連続切片より前庭脊髄路軸索の脊髄内走行軌跡を多髄節にわたり追跡し、単一網様体脊髄路軸索を同定した。さらに、これらの軸索が分枝する軸索側枝の灰白質内分枝様式を連続切片上より再構築し、単一前庭脊髄路軸索の頚・胸・腰髄部内多髄節支配様式の特徴を明らかにした。以上の成績はJ.Comp. Neurol.誌に掲載された。 2 サル大脳皮質運動野の網様体投射様式の解析:ケタミン麻酔下でニホンサル(2頭)の1次運動野・運動前野に皮質内微小電気刺激を加え、誘発された運動より上肢・下肢領域を同定した。各々の皮質領域に順行性神経標識物質(BDA)を微量圧注入し、3-4週間の生存期間ののちに動物を灌流固定し大脳・脳幹組織を摘出した。大脳・脳幹部(橋・延髄部)について50μm連続横断切片を作製した。これらの切片標本をもとに順行性標識された神経線維および終末の脳幹内分布について現在解析している。 本年度は主たる備品として購入した顕微鏡用CCDカラーカメラ(ソニー・XC-003)と昨年度購入した顕微鏡三次元座標入力装置(MBF社・BP-30)を組み合わせ、標識線維・終末の分布様式の解析および単一神経線維分枝様式の三次元再構築を行なった。
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